長岡技術科学大学 環境・建設系 都市計画研究室
中出文平 教授/樋口秀 准教授/松川寿也 助教/相田久夫 技術職員
長岡技術科学大学都市計画研究室では、都市計画法をはじめとする土地利用制度のあり方の他、地方都市中心市街地活性化などに関するテーマに取り組んでいる。同研究室は、土地利用や都市施設をはじめとする膨大な空間データの構築とその解析ツールとして、平成8年8月からSISを導入し、前述の分野に関連した研究成果を挙げている。
お客様プロフィール
開校:1976年
所在地:〒940-2188 新潟県長岡市上富岡町1603-1
TEL:0258-46-6000
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長岡技術科学大学は、社会の変化を先取りする「技学」を創成し、未来社会で持続的に貢献する実践的・創造的能力と奉仕の志を備えた指導的技術者を養成している。本学は大学院に重点を置き、Vitality[活力]、Originality [独創力]、Services[世のための奉仕]を基本理念とした「考え出す大学」を目指した教育・研究に取り組んでいる。
導入の背景
本研究室は、研究室設立当時から区域区分制度、用途地域、地区計画等をはじめとした都市計画実務者(行政職員・都市計画コンサルタントなど)が携わる分野全般を研究領域とし、地味でありながらも専門性の高い研究領域に継続的に取り組んでいる。
土地利用制度に関する諸施策を客観的に評価する、あるいは都市が抱える様々な事象を解き明かすためには、都市の抱える基礎的な情報を「空間として把握」し、それを「空間として解析」することで分析結果の信頼性を確保することが重要である。そして、その結果を「空間として明示」し、誰もが容易に理解できるようにすることも求められる。
本研究室ではこの方針に基づき、研究を遂行する上で必要不可欠となる以下の点を評価してSISを導入した。
- 関係機関より提供いただく様々なデータ形式でも、その読み込みが可能であること
- バッファリング機能など基礎的な空間データの構築・解析が容易であること
- 空間データの条件抽出やエクセルデータリンクが容易であること
- 解析結果をわかりやすい形ですばやく地図上に表示して確認できること
- 大型スキャナー・大型プリンターに接続することで、地図としての読取り・印刷が可能であること
- 全体的なコストパフォーマンスが評価できること
運用
本研究室では、SIS Map Modellerを4ライセンス購入し、研究室に在籍する約20名の学生が専用の空間解析室内で24時間活用できる研究環境を整備している。研究分野では、人口集積、土地利用現況、開発動向、地価動向などの空間データの構築、解析、分析結果の表示に利用している。
また、教育分野でも、SIS上で構築した全国の都市計画規制状況や災害リスク情報をGoogleマップなどのWebGISと連動して表示させるシステムを立ち上げ、高校生や一般市民にもGISを体験する機会を設けている。
導入効果
学部生の段階からSISの操作を習熟させることで、大学院での研究活動の向上が期待できるほか、GIS関連企業への就職など進路選択の幅が広がった。
今後の展開
- 引き続きSISを活用したGIS教育・研究の普及・発展に努めたい。
- 自治体職員に対してもGISの魅力を発信し、行政機関での積極的な活用を促したい。
SISを活用した研究
本研究室では、学生全員がSISを活用した研究に従事している。
以下は比較的活用された近年の研究テーマであり、そのうちの3テーマを紹介する。
- 平成24年度 修論 新設・拡大した都市計画区域の技術的基準の課題に関する研究
- 平成24年度 修論 地方都市における長期優良住宅の立地実態とその課題に関する研究
- 平成23年度 修論 大都市圏法の政策区域を根拠とする都市計画制度に関する研究
- 平成23年度 修論 個別規制法の運用に起因する土地利用基本計画の五地域区分に関する即地的研究
- 平成23年度 修論 新規用途地域の指定に関する研究
- 平成22年度 修論 地方都市における固定資産税収の空間的把握と都市間比較に関する研究
- 平成21年度 修論 地方都市における公共交通の持続可能な市街地構造に関する研究
- 平成21年度 修論 地方都市の中心部近郊郊外住宅地における持続可能性からみた居住者の入れ替わりに関する研究
- 平成20年度 修論 地方都市中心市街地の屋外平面駐車場の実態とその対応に関する研究
- 平成19年度 修論 散居集落における市街化過程の実態と土地利用コントロール手法に関する研究
平成23年度 修論 個別規制法の運用に起因する土地利用基本計画の五地域区分に関する即地的研究
この研究では、個別規制法の規制区域に属さない空白域に加えて、研究の蓄積が少なく人口減少等により個別規制法指定区域の再編を図るべき2つの領域に着目し、SISを用いて広範囲にわたる即地化、定量化分析を行った。
空間検索機能を活用した市街化区域縁辺の農業振興地域未指定領域の土地利用現況分析
平成22年度 修論 地方都市における固定資産税収の空間的把握と都市間比較に関する研究
この研究では、課税データが得られた地方4都市を取り上げて、SISを用いて固定資産税収の空間的把握、都市間比較、さらに固定資産税収と都市的要因(人口密度・都市構造・DID指標)の関連性を考察した。
データリンク機能を活用した固定資産税評価額(宅地)の空間化(長岡市)
平成21年度 修論 地方都市における公共交通の持続可能な市街地構造に関する研究
この研究では、地方都市での過去から現在にわたる公共交通、市街地の広がりや人口密度、市街地の変遷をSISにより分析することで、現在の市街地構造の特徴と問題点を明らかにした。
バッファリング機能を活用した市街地と駅勢圏の変化(金沢市)
今後の課題
比較的GISを活用する学生に対してはSIS学割ライセンスの購入を勧めている。しかし、同ライセンスは正規版の描画機能などを残しつつも、「トレース」「ブーリアン」といった活用頻度の高い描画機能が使用不可という安価であるが故の課題もある。
現ライセンスより多少高価であったとしても、描画機能をさらに充実させた学割ライセンスが商品化されれば、学生個人の端末で使用できる研究環境を充実(最低でも学生2名/1ライセンス)できると思われる。