豊橋技術科学大学大学院 建築・都市システム学系 助教 辛島一樹 様
「都市解析、予測、計画立案手法」をテーマに研究を行っている豊橋技術科学大学大学院 建築・都市システム学系 都市地域計画研究室では、WebGIS(公開型GIS)を利用して、防災まちづくり支援システムの開発や社会実装、延焼・災害行動・地域防災のシミュレーションや評価などを行っている。
お客様プロフィール
開校:1976年
所在地:〒441-8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1
TEL:0532-47-0111
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「都市解析、予測、計画立案手法」をテーマに研究を行っている豊橋技術科学大学大学院 建築・都市システム学系 都市地域計画研究室では、WebGIS(公開型GIS)を利用して、防災まちづくり支援システムの開発や社会実装、延焼・災害行動・地域防災のシミュレーションや評価などを行っている。
導入の背景
日本は世界でも有数の地震多発国であり、これまで阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震をはじめ、数々の地震による被害を受けてきた。これに伴い、震災時に甚大な被害が予測される市街地、特に老朽木造建物が密集した市街地について、ハード・ソフト両面での対策が国の重要かつ急務の課題となっている。
密集市街地の防災上の問題点
老朽木造建物の多い密集市街地では、以下のような防災上の問題を抱えている。
- 延焼の危険性
- 避難が困難/避難場所の確保が困難
- 消防/救出救護活動が困難
- 道路閉塞/行き止まりの危険性
- 建物倒壊の危険性
こういった事情を踏まえ、防災まちづくり推進計画策定の1手法として、防災まちづくりワークショップが全国各地で実施されたが、専門知識を持たない住民にとって、具体的で実行性の高い計画を策定することは困難であった。
そこで、防災支援技術開発への社会的要請が高まり、それに対応するために、同研究室が「防災まちづくり支援Webシステム」など、災害に強い市街地を形成するための支援技術の開発を行った。
開発にあたっては、現場への普及を目指し、以下の要件が設定された。
- 市街地整備/改善の代替案を反映した仮想評価がリアルタイムで行えること
- 地域の災害時の対応力が目に見える形で直感的に理解できること
- 日常的なまちづくり活動の中で住民が使えること
運用
同研究室では、特定地域対象の計画づくりで「防災まちづくり支援Webシステム」など計画技術を利用してもらい、その効果と課題を検証した。
事例1:密集市街地整備事業における「防災まちづくり支援Webシステム」の社会実装
システムの機能である、延焼危険性評価ツール(まちの燃えやすさ)、災害時行動困難性評価ツール(避難の難しさ)を用いた大規模地震発生後の危険性評価を、豊川市の市街化区域全域に対して実施し、 危険性の高い複数の地区を抽出した。
それらの地区からモデル地区を選定し、具体的な整備案の検討を、その整備が実施された場合のリスク軽減効果を把握しながら進めた。
防災まちづくり支援システムのイメージ
延焼危険性評価ツールの評価結果イメージ
災害時行動困難性評価ツールの評価結果イメージ
延焼危険性評価ツールを用いて豊川市市街化区域全域を評価した結果
災害時行動困難性評価ツールを用いて豊川市市街化区域全域を評価した結果
狭隘道路を幅員6mに拡幅した場合の延焼リスク軽減効果の把握
事例2:地区防災計画策定のための「共助力評価ツール」の活用
大規模地震災害時に単独では避難の難しく、周囲の支援が必要な方(要援護者)の避難支援が可能な地域の力を共助力とし、その共助力の評価が可能なツールを、モデル地区に対して実施した。
共助力の低いエリアの把握が容易となり、共助力の高い、余裕のある地区との協力体制の構築の検討など対策を検討することが可能となった。
導入効果
同研究室では、上述の計画支援技術の活用により、以下のような効果が期待できるとしている。
- 防災まちづくりの自主的取り組みの活性化
- 地域の防災まちづくりの気運高揚
- 防災まちづくりの意識啓発への寄与
- 効果的な市街地整備の実施、財源の効果的支出
今後の展開
上述の計画支援技術について、実際の地区での実装を重ねる予定である。地域特性の異なる複数地区での実装成果の分析を通して、より使いやすい計画支援技術へと改良を図る予定である。
また、実地域に潜在する災害リスクの可視化に関する計画支援技術の開発を継続して行う予定である。