徳島大学
大学院 先端技術科学教育部 環境創生工学専攻 エコシステム工学コース 政策シミュレーション工学研究室
近藤光男 教授/奥嶋政嗣 准教授
地域活性化、ユニバーサルデザインとまちづくり、防災、計画支援ツール、社会環境政策の提案など、現実社会と密接に関わる分野のテーマに取り組んでいる徳島大学政策シミュレーション工学研究室は、データ整備に費やす手間の軽減化、解析結果表示の簡易化などのためGIS導入を決定。活発な研究活動にフル活用している。
お客様プロフィール
開校:1949年
所在地:〒770-8501 徳島市新蔵町2-24
TEL 088-656-7021
政策シミュレーション工学研究室
〒770-8506 徳島市南常三島町2-1
TEL 088-656-7339
豊かな緑と温暖な気候に恵まれた地にある徳島大学は、「独創的で世界トップレベルの研究拠点」、「特色ある教育」、「密接な産学官の連携と幅広い地域貢献」を目標に掲げ、国際的なレベルの研究内容の発信と専門分野の研究者を育成する機関として、特色ある教育・研究活動を活発に行っている。
導入の背景
徳島大学大学院政策シミュレーション工学研究室では、都市地域計画、環境システム分析を中心に研究活動と学生指導を行っている。
安心、安全、快適な生活環境を創造するためには、都市地域計画(まちづくり)、環境政策などに関する効果的な政策立案が欠かせない。ある政策が立案される場合、まずはそれが実施された場合に、何がどのように変化するのかといった予測が行われ、その結果から政策を評価する。これを繰り返すことで、最適な政策の提案が行われる。
研究室では、この一連の流れの中でも、予測、評価手法の開発を中心に研究を進めている。特にGISは、都市内で生じる現象の分析やシミュレーションを行う上で必須のツールとなっている。
同研究室では、以下を基本方針としてGIS導入を検討した。
- 様々な形式のデータ(例:人口、面積、施設からの距離など)を、必要な地域の分だけ、必要な形式で取り出して使えること
- 解析結果をわかりやすい形ですばやく地図上に表示して確認できること
- 都市分析モデルを組み込むことで、計画策定の場で利用できる計画支援ツールを開発できること
システム選定のポイント
- 操作が容易で処理が速い
- 対応しているデータ形式が豊富
- APIが豊富に提供されており、VBでカスタマイズしやすい
- PDF変換が速い
- プリントテンプレートが使いやすいなど、便利な印刷/出力機能が装備されている
- マニュアルがわかりやすい
運用
研究分野では、計画支援ツールの開発、都市モデル分析のためのデータ作成、結果表示などに利用している。教育分野では、住宅地図の中から必要な箇所だけ抜き出して印刷し、都市計画関連の演習で利用しているほか、GISの講義内で、GISの基本機能(オーバーレイ、バッファリングなど)を説明する際に利用している。
頻繁に利用する機能としては、主題図作成、データ変換、図形と属性のリンク、ルート検索(条件付き)などが挙げられる。
導入効果
- 学生のGISソフトの操作スキルが向上し、卒業後GISを業務で利用したり、GIS関連企業へ就職するなどの実績が出てきた。
- 以前に比べ、データ作成に費やす労力が抑えられるようになった。
今後の展開
- SISを講義、演習で利用することで、学生にGISの基礎を身につけさせたい
- 研究室で開発した分析モデルをSISに組み込み、都市計画支援ツール(アプリケーション)を開発したい
SISを利用した研究
■平成17年度
修論 配置距離に基づく生活環境施設の分類と立地評価に関する研究
卒論 緑地による大気浄化度を評価指標とした郊外部の市街化規制方策の検討
卒論 シミュレーション型広域交通量配分モデルを用いた自動車交通が大気環境に及ぼす影響分析
卒論 視覚障害の擬似体験に基づく歩行空間のバリア評価に関する研究
卒論 許容満足距離に基づく混合施設の配置評価と整備計画に関する研究
■平成16年度
修論 都市政策支援のための市街化モデルの構築
修論 視覚障害者の移動負担を考慮した歩行空間評価モデルと外出支援システム
修論 地震津波災害時の道路閉塞を考慮した避難経路分析と避難場所の配置計画
卒論 マルチエージェントシステムを用いた歴史的市街地における津波避難シミュレーションモデルの構築
卒論 災害弱者を考慮した一時的な避難所配置に関する研究
許容満足距離に基づく混合施設の配置評価と整備計画に関する研究
ゴミ収集所は、遠すぎると不便、近すぎると迷惑に感じる施設である。こういった施設を混合施設と定義し、その配置計画論を研究している。研究では、住民にアンケート調査を実施し、ゴミ収集所までの許容距離を質問、その結果を用いて、許容満足度関数を定式化した。このモデルを用いて、SIS上で最適配置を検討した。
シミュレーション型広域交通量配分モデルを用いた自動車交通が大気環境に及ぼす影響分析
この研究では、当研究室で開発した広域交通量配分モデルを使って、交通量配分を行い、その結果からCO2とNOXの排出量を推計した。推計では、SISを使って道路ネットワークデータを整備し、現状と徳島環状線建設の2ケースについてシミュレーションを行い、SISで結果を表示した。
セルオートマトンを用いた市街化予測モデルの開発
徳島都市圏を対象に、市街化を100mメッシュ単位で予測するモデルを開発した。SISで土地利用、道路網、施設の位置などをデータ化し、別のプログラムにより予測、その結果を再びSISで表示した。
SIS 教育用25ライセンスパック
SISの購入にあたっては、政策シミュレーション工学研究室と他2研究室で共同出資し、教育用25ライセンスパックを購入。各研究室に8ライセンスずつ割り当てて利用している。政策シミュレーション工学研究室にライセンスサーバを設置し、学内LAN内で稼働中である。
25ライセンスパックは、単体での購入に比べて経費を削減できるうえ、学生数や研究テーマの変動により生じるライセンスの過不足にも柔軟に対応できるというメリットがある。