東京都北区 まちづくり部 道路公園課 道路台帳係 荒井和也 様
東京都北区では、従来の人的な情報提供方法に限界が生じ、電子化を決定。しかしGIS導入に至るまでには、システム整備といったハードの問題だけでなく、職員の意識の問題もクリアする必要があった。
お客様プロフィール
人口:318,365人(2010年3月現在)
面積:20.59k㎡
所在地:〒114-8508 東京都北区王子本町1-15-22
TEL:03-3908-1111
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東京都北区は、その名のとおり東京都の北部に位置し、北は荒川を隔てて埼玉県川口市、戸田市に、東は荒川区ならびに隅田川を隔てて足立区に接し、西は板橋区、南は文京区、豊島区に接している。平成11年より「ともにつくり 未来につなぐ ときめきのまち - 人と水とみどりの美しいふるさと北区」を基本方針として、積極的にGISを活用したまちづくりに取り組んでいる。
導入の背景
情報の提供方法を変える
東京都北区では、当初、地図・地理関連の情報提供を「アナログ的」に行っていたが、膨大な量をうまく処理しきれず、情報入手に非常に時間がかかっていた。
そこで、個別業務用アプリケーションを利用して情報提供の電子化をすすめ、互換性の確保と検索機能を強化し、情報の所在と内容の把握の簡易化を中心に、他組織とのデータ共有化を図ることにした。
平成10年、庁内LANの整備が開始され、外部とのメール送受信やインターネットの閲覧が可能となった。その頃からGISの導入検討が始まったが、結局一部の部署が個別業務用に「電子案内図」を用意し、情報を閲覧するにとどまった。
土地・道路関連の情報が大量に集まる建設部建設管理課において、年間1000件以上の関連図面や文書、数十年分の未整理資料などを職員数人で処理していくのは限界だった。
さらに、地籍調査にあたり大量の土地関連資料を整理・保管する必要があり、数値情報化だけでなく完全電子化を目指した調査体制を準備したこともあって、地籍測量支援システムから地籍成果を出し、それを電子地図として地籍データ保管システムに取り込めないか検討を開始した。
職員の意識を変える
地理や地図に関する情報は、道路、施設の案内から要介護支援者の所在、各種統計に至るまで様々である。これらの情報提供は電子化以前から行われていたが、維持管理がきちんと行われていなかった。
これは、GIS導入によって改善されるものではなく、構造的問題や職員の意識の問題と関連していた。当時、15人につき1台程度の割り当てだったパソコンは、職員にとって特殊業務用端末という認識だったため、GIS導入についての理解が得られなかった。
そこで、個人PCの持ち込みなどによりパソコン台数を増やし、それらをLANで結んで容量の多いデータをやりとりしたり、デジカメで撮った現場写真をスキャナで取り込んで案内図を作るなど、利便性をアピールし利用者を増やしていった。
その結果、大半の職員が経常的にパソコンを利用するようになり、その便利さを体感することで、GIS導入の必要性が認識されるようになった。
運用
データを蓄積し、利活用する
建設管理課公有地調査係は、地籍調査事業以外に、道路台帳の管理、土地境界の確認、公共基準点管理などを行っており、北区管内の地図情報のほとんどが保管されている(表1)。
当時アナログ形式で提供されていた地図や測量成果などの情報のうち、座標管理されたものの割合が高くなった。そこで、地図や測量成果の情報を電子化し、データベースを構築してネットワーク経由でデータ提供することで、データの多目的利用を図ることにした。
表1 地籍担当係で管理している主な図面
入力した情報はサーバに保管し、必要に応じて検索して読み出す。そして、読み出したデータはGISアプリケーション上で重ね合わせたり、部分的に切り取って案内図や申請書にコピー&ペーストできる(図1)。
業務のコンピュータ化が遅れている部署でも、情報検索のみ行い、公有地調査係が出力環境を整備することで、情報を利用できる。実際、「かんたんMap」(図2)と名付けられた窓口支援システムは、高齢の職員にも簡単に操作できるわかりやすいインタフェースとなっている。
このように、業務の流れを電子化し、地図・地理関連データのやり取りを円滑化することを目標にGIS化を進めていった(図3)。
図1:申請書作成を支援
図2:かんたんMap
図3:データ分散・連携型
建設管理課公有地調査課係での電子地図情報処理の流れ
導入効果
帳票類の整理やファイリングによりどんなに情報提供の効率を上げても、コンピュータによる大量情報の一括処理や高速検索には到底及ばない。とはいえ、コンピュータに全て任せるのではなく、電子化すべき点、電子化が困難な点を検討することが必要である。
北区では、GISを既存業務内に組み込んで置き換えることで、作業の効率化と情報提供の迅速化が大幅にアップした。
GIS導入後も継続して開発を行っており、システムへの組み込み対象となる図面の種類も年々増えている。今後は他の部署にも導入し、電子化をさらに拡大していく予定である。