GIS 事例

日本電気株式会社様の事例:減災対策と事業継続基盤整備におけるGIS活用

日本電気株式会社 事業支援部 リスク管理エキスパート 堀格 様

通信や情報といった社会インフラを支える事業を多数手掛けている日本電気株式会社(以下NECという)では、災害時における社会的責任や、複雑化・高度化が進んでいるサプライチェーンにおける供給責任を果たすことを目的に、グループ全体としてBCP策定に積極的・計画的に取り組んでいる。

お客様プロフィール

所在地:東京都港区芝五丁目7番1号
TEL:03-3454-1111
設立:1899年7月17日
連結子会社:310社(2011年3月現在)
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コンピュータや電気通信機器などの製造・販売、インターネット事業などを手がけている国内大手コンピュータメーカー、NECは、1899年、岩垂邦彦氏らにより日本初の外国資本(米国ウェスタン・エレクトリック社:現アルカテル・ルーセント社)との合弁会社として設立。以来、世界トップクラス品質の製品およびアフターサービスを提供し続けてきた。現在「Empowered by Innovation」をスローガンに、顧客満足を目指したたゆまない革新により、人々や社会の新たな可能性実現への貢献を目指している。

導入の背景

NECの災害対策

NECは、国内103拠点、連結で328社に従事する社員143,000人のほか、NECの事業所や工場内に入っている会社100社に出入りしている請負会社が1,600社あり、そこに従事している社員55,000人、総計200,000人の社員を抱えている。

災害発生時には、いかに社員1人1人が安全に帰宅・出勤・顧客訪問できるか、安全に事業を継続できるかについて施策を策定する必要があるが、約200,000人もの社員を持つ環境下では、1人1人に個別の対応策を作成するのは無理である。

そこで、できるだけ簡便な方法で、かつ、災害時にもある程度早く立ち直れるようなシステムを構築し、安全確保・帰宅難民対策・情報提供などを行なえるようにできないかと考えた。

防災対応・事業継続計画の検討・対応順序

NECにおける事前の減災対策

1. 事前の減災活動により「地震に強い事業場」を作る

  • 建屋耐震工事
  • オフィス備品、キャビネ等の転倒防止工事
  • 情報インフラの二重化、耐震強化
  • 要員の確保
  • 食料、水、毛布等災害対策備品の備蓄基準の見直し

2. 緊急時(発災直後)オペレーション計画の再設定

  • 事業場災害対策組織の見直し
  • 初動オペレーション確立3.「事業場RLO/RTOの見える化」システムの構築
  • 入出門管理DBによる「事業場内要員確認システム」
  • 危険地を避けて行動する「要員参集/帰宅支援システム」
  • 安否を確認する「NEC統合安否確認システム」
  • 場内・周辺を俯瞰するカメラシステム(平常時は防犯に利用)

運用

NEC災害対策システム

システム全体像

帰宅支援システムの必要性

  • 既存の安否確認システムには以下のような問題点があった。
  • 大量にメール発信されてしまうため、通信の混乱に拍車がかかる。
  • 被災地以外にも安否登録を求めるため、緊急メールが「オオカミ少年」のようになってしまう。
  • 通信事情が悪いと途中で切れてWeb登録できない。
  • 災害時の通信状況を考慮し、NECの安否確認を以下のように改良した。
  • 被災者からシステムへ情報を送信するだけの一方通行にした。
  • 集計対象は被災地のみとし、非被災地勤務者は入力義務なしとした。

この場合、地図を活用し、対象者(安否分母)を地図システムで把握する点が改良の肝となった。

社員における地図活用のメリット

災害時に帰宅を希望する社員については、常日頃から以下を実施することで防災/減災の意識向上に役立った。

  • 災害時徒歩帰宅/出勤ルートマップを出力しておき、保持/活用すること。
  • 実際にルートを歩いてみて、危険箇所等を検証しておくこと。

地図を出力しておくことで、自分の通勤経路にはこんな危険度がある、自宅周辺はどのくらい危険かを実感してもらうのが目的である。NECでは、危険箇所、交差点、一時避難場所、広域避難場所、帰宅支援ステーション(コンビニ、ガソリンスタンド)などを地図に重ね合わせ、社員に自分用のルートマップを作成しておくよう促している。

事業継続部門における地図活用のメリット

  • BCP部門が継続要員可否を判定する資料を受け取ることができる。
  • 事業継続要員の出勤/帰宅ルートを把握できる。
  • 継続要員の意識向上や出勤上の注意点が分かる。
  • 非被災地からの応援が容易になる。

想定外のメリット

さらに、災害時徒歩帰宅/出勤ルートマップが、本来の用途以外にも活用できることがわかった。

・携帯への取り込み
ルートマップをPCから携帯電話に取り込んで利用するほか、携行用行動要領などを取り込んで利用している社員もいる。

・健康増進・メタボ対策に一役
実際にルートを歩いての検証が良い運動となり、健康増進に役立ちそうだとの意見が集まった。

・新型インフルエンザ対策への活用
自宅待機/在宅勤務となった場合、本システムを利用して日々の健康状態をチェックすることができる。

東日本大震災におけるシステム利用状況

2011年3月11日に発生した東日本大震災におけるNEC帰宅支援システムの利用状況は、以下のとおりである。

  • システム利用:20日間で延べ510,000回
  • 利用手段:イントラネット、インターネット、iモード
  • 地図利用:6,000回
    ※帰宅支援地図の事前プリントアウトを推奨していたため、多くは被災地支援に利用したものと推定される。

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