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香川県三豊市様の事例:住基台帳システムと連携し業務改善や高度化、住民サービス向上を目指す

三豊市 総務部 総務課 デジタル推進室様

業務効率化や政策検討への活用、住民サービス向上を目的としてさまざまな庁内デジタル化を進めてきた三豊市は、その一環として平成27年(2015年)に統合型GISを導入しました。三豊市総務課ご担当者様に導入背景から導入後の運用・活用状況について具体例を交えてお話しいただきました。(本記事は地方自治情報化推進フェア2023(https://www.j-lis.go.jp/spd/fair/fair2023_j-lis.html)でご講演いただいた内容をまとめたものです。)

 

お客様プロフィール

父母ヶ浜(ちちぶがはま)

面積:222.70 km²
人口:60,106 人(令和5年4月1日現在)
所在地:〒767-8585 香川県三豊市高瀬町下勝間2373番地1
職員数:775 名
三豊市ホームページ

香川県西部に位置する三豊市は、南東部は讃岐山脈に接し、北西部は瀬戸内海に突き出た荘内半島がある自然豊かな都市です。

近年、日本のウユニ塩湖としてSNSで話題になった父母ケ浜(ちちぶがはま)や、瀬戸内海に浮かぶ島々を一望できる紫雲出山(しうでやま)などの絶景スポットに多くの観光客が訪れています。

紫雲出山(しうでやま)

導入背景

システム化に向けた取り組み

三豊市が統合型GISを導入したのは平成27年、今から8年前です。
単体システムとしてではなく、文書の電子化、ネットワークのイントラネット化をはじめ庁内のさまざまなデジタル化、業務効率化の一環として統合型GISの導入を進めました。

平成18年 三豊市誕生に合わせて、シングルサインオン・内部情報ソリューション導入
平成23年 収受文書・起案文書の電子決裁開始(文書管理システム)
平成26年 学校、幼稚園、保育所など光ファイバーによるイントラネット化
平成27年 統合型GIS導入
平成28年 ・本庁舎全館Wi-Fi化、大型モニター(会議室内)導入
・議会ICT化(タブレット端末を用いた情報共有、ペーパーレス)
平成31年 デュアルディスプレイ導入(令和5年度本庁舎全員 + 支所に配置完了)
令和2年 オフィス改革(総務部、政策部にフリーアドレス導入)
令和3年 クラウド型電話交換機導入、1人1台スマートフォン貸与

統合型GISは使いやすいインフラ基盤のもと、政策決定や分析、住民対応効率化のツールとして他システムとの連携利用を目的に導入。
単なるツールで終わらせず、システム連携の相乗効果による業務改善・高度化を目指しました。

 

導入前の課題

統合型GIS導入前には以下のような課題がありました。

  • 各原課が個別業務ごとにGISシステムを運用しており、個別GISを導入した部署でしか当該GISを利用できない。
  • 個別GISが導入されていない部署は紙の住宅地図や管内図などに手書きしており、資料の保存・共有が難しい。(導入前は紙図面の必要箇所をコピーして手書きしたのちスキャン・保存していた。)
  • 地図化が可能と思われる台帳情報は多数あるが、単独部署内のエクセルデータに留まっており、データ共有や政策立案への活用が難しい。

 

課題解決に向けた統合型GISの要件

導入検討で挙がった主なシステム要件は以下のとおりです。

他のシステムと連携させたいという点から、使いやすさ・手軽さ(職員がワンクリックでログインできること・他のツールを使いながら簡単に操作できること)を重視しました。

  • 利用者がストレスなく操作ができること。分かりやすく、動作速度が優れたシステムであること
  • シングルサインオン機能を備えていること(ID・パスワードを入れることなくポータルにログインしてGISを起動できること)
  • 地図情報の共有はもとより、政策立案に役立つ豊富な分析が手軽に行えること
  • 住民基本台帳システムとの連携が可能なこと
    同期:日次差分更新   形式:CSV

 

導入~運用までの経緯

公募型プロポーザル方式での業者選定によりインフォマティクス社に決定。業務委託契約後、約4ケ月でシステム構築が完了し本稼働を開始しました。

期間 内容
平成26年10月 地方自治情報化推進フェアでインフォマティクス社のベンダープレゼンテーションを聴講
平成27年6月〜8月 公募型プロポーザル方式により業者選定(6月下旬に公募開始)
平成27年10月 統合型GIS構築に係る業務委託契約締結(業者決定)
平成28年2月 職員への全体研修・本稼働

 

住民基本台帳システムとの連携

公募にあたっては、調達仕様書に既存システム(住民基本台帳システム)との連携を明記しました。

  • 連携仕様
    ・更新方法  同期:日次差分更新  形式:CSV
    ・地名辞典  当初地番図データベースと住民基本台帳とのマッチング処理を行うものとし、アンマッチデータについては内容検証を行った上で可能な限り消し込みを行うものとする。
  • 住民基本台帳システムの対応
    ・現存者を対象として全件出力
    ・出力文字コードはUNICODE
    ・外字個々の考慮は行わず、外字域の文字は■(四角)に変換

 

運用状況・活用事例

職員研修の実施状況

運用保守委託契約の中で職員研修について記載し、年2回インフォマティクス社に来庁してもらい研修を行っています。

研修は「全体操作研修(1日)+個別相談会(1日)」の2日構成です。

  • 全体操作研修
    操作に習熟していない職員を対象とした基礎的な内容です。
  • 個別相談会
    インフォマティクス社と原課担当者が直接話し、業務に関する悩みを相談できる研修です。GISは専門的なシステムなので職員だけでは解決できないことが多いもの。「GISを使ってみたけどうまくいかなかった」「こういうことをやってみたいけどどうしたらいいのだろう」といった悩みを直接話しながら解消できるので重要な研修となっています。(毎回5~6件対応。7年間で延べ38件実施)

令和5年度からはオープンデータの整備に向けて「統合型GISを活用したオープンデータの作成」を全体操作研修の中に盛り込んでいます。こういった形で毎回インフォマティクス社と相談しながらニーズに合った研修内容を決めていけるので大変助かっています。

個別相談会の実施状況

これまで各原課から寄せられた相談内容をピックアップしました。

総務部
  • 防犯灯台帳の更新、オープンデータへの対応方法
  • 公有財産台帳を地図上で更新したい
  • 住基データと防災情報を照合して避難情報発令等に活用したい(危機管理課)
政策部
  • バス停、バス路線を地図上で更新したい
市民環境部
  • 住基データとマイナンバーカード申請者リストを照合して、マイナンバーカード未申請者がどの地域に多いのかを特定したい(出張申請の決定に活用できそう)
  • ゴミ収集場所を追加・更新したい
健康福祉部
  • 住基データと避難行動要支援者管理システムを連携したい
  • 市内の医療機関、調剤薬局等のデータを地図上で管理したい
農政部・建設部
  • 港湾施設、漁港施設の点検業務におけるGISの活用
  • 農地の現地確認用資料を簡単に作成したい
教育委員会
  • 住基データや行政区域データと現行学校区を照合して、小中学校再編(統廃合)計画策定における学校区の検討に活用したい

 

活用事例

庁内における統合型GISの活用事例をご紹介します。

都市計画

都市計画事業への活用

  • 原課で作成した都市計画区域図のポリゴンデータと住基データを重ねることで、区域内の人口を正確に抽出することが可能
  • 人口動向や商業施設の分布等と重ねることで、区域再編時の新たな区域指定検討にも活用

下図の紫のエリアが都市計画区域、赤(女性)と青(男性)の点が住基データです。インフォマティクス社製GeoConicの分析ツール(ポイント集計機能)を使うことで、区域ポリゴンに住基データを重ね合わせて人口だけをエクセルで集計できます。

さらにこの機能を使って区域内人口の推移を追うことで、都市計画事業の成果を把握したり、政策方針の検討材料として活用したりすることができます。

防災

早期立退き避難検討地域における避難計画

早期立退き避難検討地域(高潮災害発生時、すぐに罹災が想定される地域)のポリゴンデータを保有しているので、そのポリゴンデータと住基データを連携。対象者を集計し、当該地域の避難場所だけでは収容しきれない場合の別の受入れ地区検討に活用しています。

下図では、黄色のエリアが早期立退き検討地域で、画面右側の行にそのポリゴンデータが入っています。各ポリゴンデータは別々のアイテムだったのですが、ポリゴンごとに集計するには数が多すぎるので、GeoConicの足し算機能を使ってそれらを1つの大きなポリゴン(1つのアイテム)に変換しました。

住基データを元データにして、その住基データレイヤに対して検討地域ポリゴンの領域内でフィルタをかけます。

住基データレイヤのフィルタ結果をCSVに出力し、エクセル上で行政区ごとに集計。氏名情報も含んだ住基データからポリゴン領域内のデータだけを抽出して避難計画に有効活用した事例です。

 

避難情報発令時のエリア分析

各災害において、ハザードマップと住基データを重ね合わせることで、避難情報発令時に被害が予想される地点の情報をリアルタイムに集計・表示できます。昨年の高潮災害発生時に活用しました。

以下は土砂災害と住基データを重ね合わせた例です。土砂災害が発生しそうな場所にあたる区域と該当の住基データを重ね合わせることで、避難勧告を出す対象者の情報を正確に抽出し発令できます。

オープンデータ

市道網図の公開

統合型GISでは市道網図などのラインやポリゴンデータをKML形式で簡単に公開できます。

KML形式はGoogleマップにインポートできるという利点があります。市が保有する住所情報をオープンデータとしてそのまま公開するだけでなく、道路情報や分析データをKML形式にして公開すれば、利用者の方がGoogleマイマップ等に取り込んで活用できるだろうという思いから、昨年度より、オープンデータを作成する際は必ずKML形式でも作成して公開しています。

以下は三豊市ホームページに公開されている市道網図です。どなたでもGoogleマップ等に落としてご活用いただけます。

KML形式とは:地理空間情報の表示の管理などを目的とした情報をXMLで記述したファイル形式

三豊市ホームページで公開中
https://www.city.mitoyo.lg.jp/kakuka/kensetsu/kensetsu/3/2225.html

 

オープンデータの作成・共有

当初の目的にもあるとおり、誰でも簡単に使えて1つのシステム上でいろいろなデータを確認できることが重要と考えています。

原課が持つデータをエクセルで提供してもらい、統合型GIS上で1つのコンテンツにさまざまなオープンデータの項目を集約・共有すれば職員が自分の業務に有効活用できるのではないかと思い、オープンデータの整備を進めています。

現在、デジタル庁に公開されているオープンデータ標準データセットの基本編・応用編の作成を行っています。

以下の画面例のように、公共施設一覧、住基人口、公衆無線LAN等の情報を1つのデータセットに入れ、CSV、KMLファイルに出力してオープンデータとして公開しています。

今後取り組みたいこと

業務スマホとのコラボレーション

三豊市では職員に1人1台業務用スマートフォンが配布されており、業務目的であれば外出時の携帯も許可されています。現場で撮った写真を統合型GISへ取り込んで地図上に表示できるので、現場管理や災害発生時の被災地の状況把握に活用できるのではないかと考えています。ネットワークが分離している等の課題はありますが、業務スマホと統合型GISの連携活用は今後の取り組みとして検討を進めています。

 

まとめ

運用してきたからこそわかる苦労談

機能豊富だからこそ難しい ...
統合型GISは非常に豊富な機能を備えています。さまざまな作図機能があり、分析ツールでいろいろな分析も可能で、やりたいことは何でもできるでしょう。ただ、その機能の多さから庁内ユーザーに苦手意識を持たれてしまうので利用促進の面で難しいところでもあります。

コンテンツ/データセット/レイヤごとに細かくアクセス制御できるが...
統合型GISでは細かくアクセス制御できますが、せっかくデータセットを作成して公開したのに、権限設定がうまくできていなかったために作成者しか閲覧できない(他の職員も閲覧できていると思っていたら、実際にはできてなかった)という状況が発生しています。

だからこそ、
根気強い研修 + 管理部門の勉強が必要
個別相談会がとても重要

なのです。そして、一度理解できると大変便利に活用できます。

人口6万人規模の自治体でもこのように活用できている事例としてご紹介しました。

記載されている会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。
本記事は2023年10月に地方自治情報化推進フェア2023でご講演いただいた内容を書き起こしたものです。閲覧時には変更されている場合がありますのでご了承ください。
<地図出典> ©OpenStreetMap contributors、
Terra Metrics、Googleマップ

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