杉並区 都市整備部 土木管理課 道路台帳係 様
区独自の背景地図をベースに、庁内の半数を超える課が業務に応じた地図を作成・活用している杉並区では、統合型GISと公開型GISのデータ連携に関する課題を解決するため、令和8年度から「一体型GIS」の運用を開始しました。これにより、庁内業務の効率化とさらなる区民サービスの向上を実現しました。(本記事は地方自治情報化推進フェア2025でご講演いただいた内容をまとめたものです。)
お客様プロフィール
面積:34.06平方キロメートル
人口:585,960人
世帯数:342,537世帯
職員数:3,678人
所在地:東京都杉並区阿佐谷南1丁目15番1号
杉並区ホームページ
※人口および世帯数は令和8年7月現在、職員数は令和7年4月現在
杉並区GISの概要
杉並区では、統合型GISと公開型GISの2種類のシステムを運用しています。
- 統合型GIS(インフォマティクス社製「GC Planets」)
全35課で利用。170台(うち窓口システム20台)同時接続可能。 - 公開型GIS(他社製)
区民向けに24課のデータを公開。月平均アクセス数10万件、年平均125万件。

※平成24年度に個別業務GISとして導入後、平成26年度に統合型GISとして利用開始
統合型GISには、地図の表示・検索・作図・データ管理といった基本機能に加え、杉並区独自のカスタマイズ機能も搭載されています。要望受付システム、道路管理システム、災害情報システムなど、各課の業務に特化したシステム(全10種類)のほか、来庁者向けに図面の閲覧・印刷やハザードマップの参照が可能な窓口システムも導入しています。

GISの管理・運用は、情報管理を統括する部門ではなく、都市整備部 土木管理課 道路台帳係が行っています。

GIS導入に向けた取り組み
| 平成23年度 | 独自基図の作成 |
| 平成24年度 | 個別業務GISの導入 地籍調査事業を円滑に進めるため、土地情報を管理できるGISとしてインフォマティクス社製「GC Planets」を導入。道路の現況を背景地図に搭載した「道路基図」は、現在でも全庁で利用されています。 |
| 平成25年度 | 庁内GISの再整理 個別GISから統合型GISに移行するにあたり、各部門と協議を重ね、移行データや運用ルールを整理。公開型GIS、防災GISの導入も並行して検討し、それらを統合型GISで実現できるよう、土木管理課が主体となって防災課や広報課と調整しました。 |
| 平成26年度 | 統合型GISおよび公開型GISの利用開始 全庁で利用可能な統合型GISと、区民向けの公開型GISの運用を開始。2つのシステムで、災害発生時に避難所の運営状況、要望受付、建物の被害状況などの災害情報を共有・管理できるよう統合型GISをカスタマイズしました。 |
| 令和7年度 | 一体型GIS導入の選定 |
| 令和8年度 | 一体型GISの利用開始 |
GISの利用状況
- 統合型GIS
全庁の約54%にあたる35課が利用。都市整備部では9課すべてが利用中で、道路や建築、都市計画など多様な業務に活用しています。 - 公開型GIS
24課(利用率34%)が利用し、区民向けに積極的な情報公開を行っています。
統合型GIS
公開型GIS
杉並区GISの特徴と独自地図の活用事例
特徴1 区独自の背景地図を活用
杉並区では、市販の住宅地図を使わずに、区独自の背景地図(独自基図)を利用しています。道路台帳の図面「道路基図」と、区民課が作成する「住居表示の建物形状」を重ね合わせることで、1/500の高精度な地図を背景地図として全庁で共有しています。

独自基図は、ライセンス料や配布制限がないほか、更新や見た目の変更も容易なため、各部門にも好評で積極的に利用されています。

特徴2 各課で独自の地図を作成
独自基図をもとに各課で作成された地図は182セットにのぼり、以下をはじめ様々な業務に利用されています。

独自地図の作成例
道路種別図
都道を緑色、区道をピンク色で表し、その上に建物形状のレイヤを重ねて公共・公営施設を黄緑色で表示したものです。
都道・区道を瞬時に見分けられるため、問い合わせ時に迅速に回答できます。

電子公図
独自基図の上に法務局の電子公図を重ね合わせたものです。
これにより、市販のブルーマップを使うことなく、区のデータのみで地番を検索・表示することができます。(以下の図面では地番表示は割愛しています。)

都市計画図
一般的に背景地図には1/2500の地図が使われますが、杉並区ではより高精度な独自基図(1/500)に切り替えることで、都市計画道路の検討にも利用されています。

公園基図
道路現況平面図に公園の平面図を重ね合わせることで、問い合わせ時に道路の入り口や公園内の施設情報から即座に場所を特定できるため、要望にも迅速に対応できます。

特徴3 部門ごとのカスタマイズ機能
パッケージの導入ではなく、各部門の業務フローをヒアリングし、それぞれの業務に合わせたカスタマイズを実施しています。

導入前の課題
杉並区のGIS運用では、統合型GISと公開型GISが異なる事業者により構築されていたため、統合型GISで作成したデータを迅速に公開できないという課題がありました。
データ移行には事務手続きを含めて1~2か月を要していたため、窓口で案内する情報とWebサイトで公開される情報に差が生じ、区民が最新情報を取得しにくい状況となっていました。また、公開型GISへ情報を掲載する際には、土木管理課が主管課と事業者の間に入り調整を行う必要があり、業務負担の増加も課題となっていました。

これらの課題を解決するため、両システムの事業者統一を目的として令和6年度から選定準備を開始し、令和7年度にプロポーザルを実施しました。その結果、令和8年度から統合型GIS・公開型GISともにインフォマティクス社製システムを導入することが決定しました。
システムの選定理由
選定にあたっては、次の点が高く評価されました。
- 地図描画がスムーズで、快適な操作性を実現できること
- 東京都防災システムとの連携が可能であること
- ダッシュボード機能など、データの分析・評価における将来的な拡張性が期待できること
これにより、統合型GISの業務展開が広がることや、公開型GISへ迅速に反映できる環境が整いました。

導入後の効果
統合型GISと公開型GISを同一事業者のシステムへ統一したことで、主管課が直接情報を更新し、最短で翌日には区民向けに公開できる体制を構築しました。
その結果、窓口とWebサイトで提供する情報の整合性が向上するとともに、区民へ迅速かつ正確な情報提供が可能となり、利便性の向上を実現しました。
また、これまで必要だった事業者との調整や各種手続きを省略できるようになったことで、庁内業務の効率化にもつながっています。

記載されている会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。
本記事は2025年10月に地方自治情報化推進フェア2025でご講演いただいた内容を書き起こしたものです。閲覧時には変更されている場合がありますのでご了承ください。
