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東京都杉並区様の事例:統合型・公開型を1つにした「一体型GIS」で、区民の利便性向上と庁内業務の効率化を実現

都市整備部 土木管理課 道路台帳係 様

区独自の背景地図をベースに、庁内の半数を超える課が業務に応じた地図を作成・活用している杉並区では、統合型GISと公開型GISのデータ連携に関する課題を解決するため、令和8年度から「一体型GIS」の運用を開始します。これにより、庁内業務の効率化とさらなる区民サービスの向上を目指しています。(本記事は地方自治情報化推進フェア2025でご講演いただいた内容をまとめたものです。)

お客様プロフィール

面積:34.06平方キロメートル
人口:582,796人
世帯数:339,560
所在地:東京都杉並区阿佐谷南1丁目15番1号
杉並区ホームページ
※人口、世帯数は令和7年10月1日現在

杉並区GISの概要

杉並区では、統合型GISと公開型GISの2種類のシステムを運用しています。

  • 統合型GIS(インフォマティクス社製「GC Planets」)
    全35課で利用。170台(うち窓口システム20台)同時接続可能。
  • 公開型GIS(他社製)
    区民向けに24課のデータを公開。月平均アクセス数10万件、年平均125万件。

※平成24年度に個別業務GISとして導入後、平成26年度に統合型GISとして利用開始

統合型GISには、地図の表示・検索・作図・データ管理といった基本機能に加え、杉並区独自のカスタマイズ機能も搭載されています。要望受付システム、道路管理システム、災害情報システムなど、各課の業務に特化したシステム(全10種類)のほか、来庁者向けに図面の閲覧・印刷やハザードマップの参照が可能な窓口システムも導入しています。

 

GISの管理・運用は、情報管理を統括する部門ではなく、都市整備部 土木管理課 道路台帳係が行っています。

GIS導入に向けた取り組み

平成23年度 独自基図の作成
平成24年度 個別業務GISの導入

地籍調査事業を円滑に進めるため、土地情報を管理できるGISとしてインフォマティクス社製「GC Planets」を導入。道路の現況を背景地図に搭載した「道路基図」は、現在でも全庁で利用されています。

平成25年度 庁内GISの再整理

個別GISから統合型GISに移行するにあたり、各部門と協議を重ね、移行データや運用ルールを整理。公開型GIS、防災GISの導入も並行して検討し、それらを統合型GISで実現できるよう、土木管理課が主体となって防災課や広報課と調整しました。

平成26年度 統合型GISおよび公開型GISの利用開始

全庁で利用可能な統合型GISと、区民向けの公開型GISの運用を開始。2つのシステムで、災害発生時に避難所の運営状況、要望受付、建物の被害状況などの災害情報を共有・管理できるよう統合型GISをカスタマイズしました。

令和7年度 一体型GIS導入の選定
令和8年度 一体型GISの利用開始

GISの利用状況

  • 統合型GIS
    全庁の約54%にあたる35課が利用。都市整備部では9課すべてが利用中で、道路や建築、都市計画など多様な業務に活用しています。
  • 公開型GIS
    24課(利用率34%)が利用し、区民向けに積極的な情報公開を行っています。

統合型GIS

公開型GIS

杉並区GISの特徴と独自地図の活用事例

特徴1 区独自の背景地図を活用

杉並区では、市販の住宅地図を使わずに、区独自の背景地図(独自基図)を利用しています。道路台帳の図面「道路基図」と、区民課が作成する「住居表示の建物形状」を重ね合わせることで、1/500の高精度な地図を背景地図として全庁で共有しています。

 

独自基図は、ライセンス料や配布制限がないほか、更新や見た目の変更も容易なため、各部門にも好評で積極的に利用されています。

 

特徴2 各課で独自の地図を作成

独自基図をもとに各課で作成された地図は182セットにのぼり、以下をはじめ様々な業務に利用されています。

独自地図の作成例

道路種別図

都道を緑色、区道をピンク色で表し、その上に建物形状のレイヤを重ねて公共・公営施設を黄緑色で表示したものです。
都道・区道を瞬時に見分けられるため、問い合わせに迅速に回答できます。

電子公図

独自基図の上に法務局の電子公図を重ね合わせたものです。
これにより、市販のブルーマップを使わずに、区のデータのみで地番を検索・表示することができます。以下の図面では地番表示は割愛しています。

 

都市計画図

一般に背景地図は1/2500のものが使われることが多いですが、杉並区では独自基図(1/500)に切り替えることで、都市計画道路の検討にも利用されています。

公園基図

道路現況平面図の上に公園の平面図を重ね合わせたものです。
問い合わせがあった際に、道路の入り口や公園の施設情報から場所をすぐに特定できるため、迅速に要望に対応できます。

 

特徴3 部門ごとのカスタマイズ機能

パッケージの導入ではなく、各部門の業務フローをヒアリングし、それぞれの業務に合わせたカスタマイズを実施しています。

 

現状の課題と今後の展望

杉並区のGIS運用では、統合型と公開型が異なる事業者により構築されているため、統合型で作成したデータを迅速に公開できないという大きな課題があります。

現状、事務手続きを含めデータ移行に1〜2か月を要するため、窓口とWebサイトの閲覧情報に差が生じ、窓口対応の負担も軽減されない状況です。また、公開型GISに情報を掲載する際は、土木管理課が主管課と事業者の間に入らざるを得ないため、業務への負荷も増加しています。

 

この課題を解決するため、両システムの事業者統一を目的に令和6年度から選定準備を開始し、令和7年度にプロポーザルを実施しました。その結果、令和8年度からは、統合型GIS・公開型GISともにインフォマティクス社製のシステムを利用することが決定しました。

選定にあたっては、以下の点が評価されました。

  • 公開型GISへのデータ反映がスムーズである
  • 公開型GISへのデータ移行時に、元のスタイルを保持できる
  • 地図描画が速く、操作が快適である

これにより、統合型GISで作成したデータを、色味や装飾を保ったまま公開型GISへ迅速に反映できるようになります。

今後は主管課が直接更新し、翌日には区民向けに情報提供できる体制が整うことで、区民の利便性向上と庁内業務の効率化が期待されています。

記載されている会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。
本記事は2025年10月に地方自治情報化推進フェア2025でご講演いただいた内容を書き起こしたものです。閲覧時には変更されている場合がありますのでご了承ください。

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