MicroGDS ユーザー事例 No.17

対談「コンテスト受賞者が語る制作秘話」
学生敢闘賞 椙山女学園大学 横田 梓 氏
椙山女学園大学 非常勤講師 村瀬 正彦 先生


建築CGパース作品コンテスト 「Piranesi&MicroGDSアワード2008」受賞者の皆様に、 「アワード受賞者による建築CG制作秘話&最新情報セミナー」で、 制作秘話や、テクニック、最新の活用事例などを、ざっくばらんな対談形式でお話を伺った。( インタビューア:インフォマティクス村岸)

椙山女学園大学

(C)椙山女学園大学 学生敢闘賞受賞作品1997年に導入して以来、CAD授業はMicroGDSで

村岸: 椙山女学園は、名古屋市東部にある、幼稚園から大学院までの女子一貫校です。卒業生には、「前畑がんばれ!」で有名な水泳選手の前畑秀子さん、歌手の「あみん」 、フィギュアスケート選手の中野友加里さんなどがいます。以前は愛知県の女子大で建築科があるのは椙山女学園大学だけでした。MiroGDSを導入されたのが約12年前、1997年です。それまで2次元のCADを使っていたが、これからは3次元をやらなくてはならない、というお話を先生から頂き、まず学生さんへの個人販売から始めました。当時の環境は、MicroGDS Professional 5.0、OSはWindows 95、CPUはPentiumの100MHz、メモリ24MB、ハードディスク810MB、ライセンス管理は「ドングル」といってプリンタポートにロックを指す形のものでした。こんなんでCGを作っていたんですね。その年の8月に教室導入をしていただき、それ以来ずっとMicroGDSで1年生から4年生まで授業をしていただいています。その内容について、非常勤講師としてCADの授業を6年間担当されている村瀬様にご説明いただきます。

建築コースの授業の様子を村瀬先生に伺いました

授業の方針

村瀬先生: 椙山女学園大学の建築コースでは、構造から設備までしっかりと授業を行います。1年生から手描きの製図と並行して3次元CADを扱います。さすがに1年生なので、まだ全然図面を読むことさえできませんが、CADに慣れさせていくという方針です。かなり苦しいスケジュールで、学生にとっては酷ですが。

体制

椙山女学園大学の建築コースでは、構造から設備までしっかりと授業を行います。1年生かCAD専用の教室には70〜80台のパソコンがあり、生徒の間には教師が使うパソコンの画面が表示され教師のパソコンでは、各学生がどんなことをやっているか、サボっていないか監視できるようになっています。最近の学生さんは小学生からパソコンを触っている方が非常に多くて、だいたいの操作は何も言わずにできるので、非常に楽になってきています。1学年約120名のほぼ全員が受講しており、一度に教室に入りきりませんので、半数ずつに分けて授業を行っています。学生にとっては隔週の授業です。

1年生では・・・

まず、1年生から早速2次元の図面を描いていきます。全然図面を読めない、トレースを始めたばかりという学生ばかりですので、図面とは何か、この太い線はどういう意味があるのか、基準線とは何か、というところから始めていくので非常に大変です。それらを1つ1つ丁寧に解説しながら、まずは簡易な平面図を丁寧に描いていきます。ここでだいたい1ヵ月半くらい。

次に、その平面図の中の一室をモデリングで立ち上げて内観パースを作ります。ここまでで3ヶ月くらい、約5回の授業で、一通りの操作を覚えるという感じです。こんな短期間でこれだけのことを全部やってほしいという大学の希望なので、かなりのハードスケジュールで、学生もあまり覚えられません。まず、1年生から早速2次元の図面を描いていきます。全然図面を読めない、トレースを始めたばかり、というこんなんでいいのかという気持ちもありますが、操作は授業で1回やっただけで覚えられるわけはありませんので、こんなことをやったら、確かこんなことができたな、確かこういうことが教科書に出てきてできたなという、その可能性だけわかってもらえればOKだ、と授業では話しております。


1年生の最後の授業には、極力「楽しい課題」を出すようにしています。今は、自分の好きな作家さん、建築家でも漫画家でも音楽家でも誰でもいいのですが、記念碑を作りましょう、という課題を出しています。

椙山女学園大学では1年生の時は詰め込みの授業がずらっと並んでいまして、しかも学生さんはみんな真面目でひたすら授業をとっていくという子ばかりで、かなり創作意欲に燃えて積極的なので、1年生の授業はこのような課題を出しています。私が全然教えるつもりがなかったようなことでも、「こういうことはできませんか」といろいろ聞いてきます。学生が120人もいると、中にはこだわりをもって頑張る学生もいますので、そういう子たちで引っ張っていく、という形です。ここまでで、CADを一通りは、とりあえずはやった、覚えることは無理だけれど一通りはやっちゃう、という勢いで、1年生の授業を終わります。授業数としては6回か7回です。

 


2年生前期では・・・

2年生の前期は、その続きとして若干難しい内容をやります。春休みをはさむと学生さんも全部忘れますので、また最初から解説していくことになりますが、2年生の前半を過ぎますと、だいぶ図面を読めるようになっていきます。4つほど図面をそろえておいて、そのうち好きな図面を選んでトレースしてもらいます。平面図、立面図、断面図をそれぞれ描いてもらい、まずは2次元の図面を描けるように、ということで授業を進めていきます。 次に有名建築家さんの図面を3Dモデリングします。これも授業は2回あるかないかくらいで、他のレポート等々で追われている中、一生懸命作ってもらっています。外観、内観とパースを作成した後で、それを1枚のプレゼンボードにして、図面、文字、各パースを入れて提出してもらいます。 ここまでを2年前期までにやってしまうと、建築の製図の授業でCADを使ったり、コンペ等も積極的に出す学生さんがたくさん出てくるようになってきます。基本を身につけてしまえば、あとは自分たちで覚えていく、こういう風にやりたい、ああいう風にやりたい、となればしめたものです。

 

 

2年生後期では・・・

2年生後期には、マテリアル設定、イメージマッピングの設定、光の表現、フォトレタッチについて学びます。ここまで来ると、自分たちのやりたいこと、レイアウト技法、配色なんかにもこだわりが出てくるようになり、コンペ等にも出せる実力がついてきます。授業では、即日課題に近い、1回の授業だけで提出させています。もっと難しいことをということで、Piranesiの使い方、実写との合成なども課題として、自分の作品をプレゼンシートにレイアウトして発表してもらう、という授業になっていきます。あとは、卒業設計、学生コンペ等々にみなさんどんどん参加してください、ということで、ここで大体CADの授業はおしまいです。

 

 

3年生以降では・・・

3年生以降は、よりフォトリアルなレンダリング技法や、逆に簡単な線画のパースを作る方法、3次元曲面をくねくね面白い形で作るにはどうすればよいか、また、別のCADやCG製品の紹介もします。アニメーションやパノラマの写真などをどういう風に作ったらよいかも話します。

授業の教材について。WEB公開も予定

村瀬先生: 3次元曲面授業で使うプリントも、最初の頃はWordで作成していましたが、さすがにレイアウトや配色はもう少しわかりやすくカッコよく仕上げなくちゃいけないなと思うようになりまして、数年前から一生懸命カラフルに作ってはいるんですが、毎年毎年授業でやりたいことが自分の中で少しずつ変わりまして、あまり流用できません(笑)
私は、本業は名古屋で設計事務所をやっていまして、本業に支障が出るくらいなんですが、こちらが一生懸命やらないと学生さんもついてきてはくれないんじゃないかということで、プリントにも力を入れています。こういった情報が共有できるよう、今後時間が取れ次第、Webなどでも公開して、皆さんが自由に使って勉強できるような環境を整えていきたいと思います。

村岸: 村瀬様はご自分のホームページでMicroGDSの使い方やライブラリを公開されていますので、ぜひご覧ください。 http://www.muramasa-w.com/

受賞作品の具体的な制作プロセスを横田氏にききました

村岸: 学生敢闘賞を受賞された、3年生の横田様に、今回の受賞作品の作成手順をお伺いします。

横田氏: 今回の作品は、2年生の時に設計し、村瀬先生の授業でCG化したものを、アワード用に修正したものです。背景画像の写真は、授業で提出した時は、現地が工事中でクレーン車があったり、曇っていたりでしたが、授業で提出しなければならないのでしょうがないや、みたいな感じで撮影したので、今回、写真を撮り直せてよかったです。

MicroGDSを使う上でのコツと制作プロセス

@まず、MicroGDSで3次元モデリングを作成します。曲面を意識した建物なので、ファセット数が200とデータが重いのですが、きれいな曲面が出るまでがんばってみました。(図はクリックすると拡大表示されます)

1. MicroGDSでモデリング

A 次にレンダリングしてCG化します。背景画像で影がしっかり出ていたので、画像に棒を立てたりして、背景の影の方向とモデリングの影の方向が合うように気をつけながら光源を設定しました。

2. MicroGDSでレンダリング

B Photoshopで建物と背景を合成しました。まず、作成した画像をPhotoshopに取り込みます。

3. デジカメで撮影した敷地写真と合成

C 白い背景でレンダリングしたので、余白を抜いて建物だけを選択します。この時、ガラスに背景が透けて見えるようにしなければいけないので、透明度を70%に設定した半透明の建物の画像と、建物から透けて見えているガラス部分が不透明な画像を作り、この2つの画像を合成して1つの画像を作りました。この画像は、貼りやすいよう背景をオレンジにしています。不透明なところは白く建物が落ちていて、ガラス部分はオレンジが透けているのがわかると思います。

4. 建物のガラス部分の透過処理

D この画像に背景写真を貼り付けます。背景写真をそのまま使用すると、建物の画像に対して違和感があると思ったので、背景写真のコントラストを少し押さえて、明度を少し上げてみました。

5. BとCを合成

E そして、建物の敷地と歩道のラインを合わせます。建物の歪みなども修正しています。

6. 建物のゆがみなどを調整

F 次に、貼り付けたために建物の下になって消えてしまった点景(木、人、電柱など)を選択して貼り付けます

7. 樹木などの添景を配置

G 最後に、影が映っているところは、建物を透明にして、背景写真から影の部分を選択して、明度を下げて暗くして、違和感のないようにしました。貼り付けたパースの画像では合成したところに白い筋が見えているので、目立たないように周りの色で塗りつぶしました。以上で完成です。

8. 完成

作品をつくるときに苦労した点は?

どうしたらパースごしに背景が自然に透けて見えるのかということを、今まで授業でやったことがなかったので、悩んで試行錯誤した結果、透明度が違う2つの画像を透過させる方法を思いついたのですが、思いつくまで時間がかかって大変でした。また、写真とCGと違和感なく合成させるために、消えてしまった木とかを選択する作業は、単純ですが時間がかかって疲れました。

 


終わりに

村岸: 実は私はこの背景写真のすぐそばに住んでいて、現地の場所もイメージできるのですが、この作品を初めて見た方は、手前の建物が斜めに見えているので、少し違和感があると思います。ところが、この場所はすごく急な坂道なんです。それを知らないと、合成がうまくいっていないと思われるかもしれませんが、実にうまくいっているんです。

ある一人の学生さんのレベルがいきなり上がった。なぜかというと・・・

椙山女学園大学で十数年前にMicroGDSの授業がスタートした頃、最初に一人の学生さんのレベルがいきなり上がったんですね。なぜかというと、骨折で入院して、することがないので、ノートパソコンを病院に持ち込んでMicroGDSのテキストをゼロから始めたら、2、3週間でかなりのものができるようになったそうです。そして、そのお友達がどんどん引っ張られていって、一気に全体のレベルが上がりました。それ以来、椙山女学園大学に関しては、使い方の指導をほとんどしなくて済むようになりました。また、今は村瀬先生がいらっしゃって、私共で知らないようなことまで何でもご存知ですので、非常に安心しております。

椙山女学園大学では、CGから何から全てMicroGDSでやっています。この作品でも、背景との合成はPhotoshopを使っていますけれど、MicroGDSだけで、しかも学生さんがここまでやった、という意味でも非常にすばらしい作品だと思います。

 

 

 

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