石川県立大学

石川県立大学 生物資源環境学部 環境科学科 教授 田野信博様

石川県立大学 生物資源環境学部環境科学科では、「農業用水を核とした健全な水循環に関する調査研究(平成19~24年度農水省委託研究)」の一環として、地球温暖化が手取川扇状地の用排水環境に及ぼす影響を明らかにするために、対象地域の土地利用図や環境汚染マップ、精密標高地図といったさまざまな主題図の作成や解析をGISソフトウェア「SIS」を使用して行っている。


お客様プロフィール
石川県立大学 校舎

開学:2005年
所在地: 〒921-8836 石川県石川郡野々市町末松1丁目308番地
TEL:076-227-7220
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「生物資源環境学」を共通のテーマとする石川県立大学では、「生産科学科」「環境科学科」「食品科学科」の各学科において、石油などの化石資源ではなく、動物や植物といった地球にやさしい生物資源の活用を探っている。また、社会で即戦力として活躍できるよう、自然や農地などの環境にかかわる実験・実習科目も充実。国際感覚を磨く豊富な語学授業のほか、環境問題について現場で体験・学習するために、さまざまな実習を用意している。



導入の背景

環境科学科の専門科目である「地域環境演習Ⅰ・Ⅱ」の中で、地域環境計画や水資源の利用や地域環境情報に関する諸問題の解析ツールとしてGISソフトウェア「SIS」(SIS Map Modeller V.6.2)を導入し、GISの演習に利用している。

運用

手取川扇状地の土地利用と環境汚濁解析の研究において、平成19年度に行った内容は以下のとおりである。

1. SISを使って、旧松任市域を中心とした白山市都市計画基本図と白山市山麓域のラスタ地図を読み込み、これにJA松任およびJA白山管内の水田転作奨励金台帳データ(平成19年度末現在)をリンクさせ、扇状地主要部の土地利用図を作成した。
2. 白山市の浄化法別処理人数に汚濁原単位を乗じることにより町丁別・処理区別の負荷量を算定し、T-NやT-P等の生活排水系汚染マップを作成した。
3. 水循環システムの解析に必要な精密標高地図を、都市計画基本図と国土地理院の50mメッシュ標高データから作成する方法を開発した。

本研究では、以下のような流れで主題図の作成や解析を行った。

・手取川扇状地背景地図の作成
      ↓
・土地利用図の作成とその解析
      ↓
・原単位法による生活排水系汚染マップの作成と考察
      ↓
・原単位法による農地系汚染マップの作成と考察
      ↓
・精密標高地図の作成と傾斜解析

上記の各段階で作成された地図や解析結果からの考察を以下に示す。

図1 JA松任管内(白山市都市計画基本図を利用)
図2 JA白山管内(白山市山麓域のラスタ地図)
図1 JA松任管内(白山市都市計画基本図を利用)

【使用データ】
白山市役所建設部都市計画課から借用した都市計画基本図(旧松任市と旧美川町の全域と野々市町、金沢市の一部が対象、1/2500、新測地系、平成16年度版、ベクトルデータ)

図1は、SISのオーバレイに読み込んだ白山市都市計画基本図の一部である。座標系には平面直角座標系2000の第Ⅶ系を使用。この地図は道路整備や都市計画用のため、ワークスペースウィンドウのアイテムツリーに示すように道路や宅地などの属性と位置情報を持っているが、農地に関しては線と記号情報のみである。従って、「作図」メニューの「四角形」コマンドを使って水田一筆ごとにエリアのアイテム化を行った。
  図2 JA白山管内(白山市山麓域のラスタ地図)

【使用データ】
(株)北日本ジオグラフィから購入したビットマップ形式のラスタ地図(旧町村所有の1/1000あるいは1/2500の紙地図をスキャナ入力、旧測地系、平成19年度版)行政界単位で解析するための境界図として、国土地理院平成17年度白山市境界データを使用

図2は、JA白山管内に属する白山市山麓域ラスタ地図の一部である。旧測地系で作成されているため、新測地系の白山市都市計画基本図と結合するにあたっては、白山市境界データを基にラバーシーティングによる幾何補正を行った。さらに、両管内の重複部分を白色に塗った新規オーバーレイを作成し、白山市都市計画基本図が優先されるようにオーバーレイの表示順序を替えてマスク処理を行った。
図3 完成した土地利用図の一例
図4 旧市町村別の水田利用状況
図3 完成した土地利用図の一例

図3は、水田転作管理データと地図をリンクして作成した土地利用図(ワークスペースウィンドウの「白山市水田.bds」)である。
  図4 旧市町村別の水田利用状況

図4は、白山市平野部扇状地内の水田分布状況を把握するため、SISのクエリ検索により水田や畑地などを用途別に抽出した後、CalcInteriorフォーミュラを用いて旧市町村の境界データに含まれる「畦畔を含む水田面積(㎡)」の合計値を求め、その量と割合を表した解析結果である。
     
図6 白山市各町丁目の処理施設分布
 
図9 白山市の旧市町村別農地系T-N分布
図5 白山市各町丁目の処理施設分布

図5は、公共下水道地区と農業集落排水地区を町丁目境界データを基に色分け表示したもの。一部色が重なっている地区は両施設が併存していることを表し、白色地区は住基人口がない地区(図中の赤丸印)といずれの施設も入っていない未処理地区(同緑色の丸印)である。これにより、白山市の水洗化事業は道法寺町近辺を残すのみであることが分かる。
  図6 白山市の旧市町村別農地系T-N分布

図6から、全水田の65%が集中している旧松任市が一日のT-N放出量は最も多く、水田の少ない山間部に行くほど汚濁量も少ないことが判明した。
     
図7 50mメッシュ表示による農地系のT-N分布
 
図8 扇状地部における精密標高地図の作成
図7 50mメッシュ表示による農地系のT-N分布

図7は、50mメッシュ表示による水田と畑地密度をそれぞれ、0、25、50、75%の4段階のレンジ主題図に色分け表示した結果である。これにより、扇状地では水田が広範囲に分布し、水田密度が75%を越えるメッシュも全体の約20%を占めることが明らかになった。一方、畑地も広く分布しているが、75%を越えるメッシュはわずか4%であった。その他、海岸部付近は砂丘地のため農地が少なく、減反政策に伴う転作は薄く広くなされているなどの実態が判明した。
  図8 扇状地部における精密標高地図の作成

図8の右側は、白山市都市計画基本図の測量基準点から作成したTINをエリアに変換した後、高さ方向のZ座標を基にSISのレンジ主題図の機能を用いて作成した精密標高地図である。カラーセットとして約500mまでの標高差を50段階に均等分割し、色分け表示している。左側の国土地理院50m標高メッシュ図が4~5段階表示されているのと比べて10倍の精度があり、農地系汚濁水の2次元や3次元解析への応用が期待される。

SISの特長

・ 読み込み可能な地図データの種類が多い点
・ TIN作成機能やフォーミュラ検索機能をはじめ、種々の演算機能を活かした高度な地図解析が可能な点

今後の課題・展望

本年度は、白山市を中心とした手取川扇状地の背景地図作成を主テーマに、水田を中心とした土地利用図の作成や原単位法による生活排水系汚染マップの作成、農地系の負荷解析に必要な扇状地の精密標高地図の作成などを行った。

本研究は、作成した土地利用図が、行政機関のさまざまな施策や地図と環境汚染情報の一元管理に応用されていくことを最終目標としており、平成24年度まで継続して行く予定である。


今後の課題は以下のとおりである。

1. 畑地や果樹園など水田以外の農地情報の追加
2. 投入肥料による農地一筆毎の搬入負荷量の算定
3. 農地系汚濁負荷の放出先河川水路の特定
4. 用水や河川別の総合的な環境汚濁負荷量の算定
5. 用排水や地下水の水質分析結果との比較考察
6. 土壌生産性分級図のオーバレイによる汚濁水の降下浸透解析
7. 精密傾斜・標高地図を用いた水循環システムの2次元および3次元解析
8. 山林系や事業所系、畜産系汚濁負荷量の算定

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