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導入の背景
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吉田氏は、平成4年、国学院大学に助教授として赴任。翌春、本寺地区のシンポジウムに講師として招かれた後、「美しい本寺推進本部」から骨寺村跡の調査依頼を受けたことをきっかけに、国学院大学歴史地理学教室において約5年にわたり調査実習を行ってきた。
当時、地元では圃場整備事業に対する機運が盛り上がっており、いったんは大区画圃場整備実施の方向に向かったものの、県側の意向により実施されずじまいとなった。それによって残った小区画水田や曲線状の水路に対して、希少価値の景観として保全を訴える吉田氏と、生産効率向上のため整備を望む地域住民との間で意見が対立したが、協議の結果、原則的に現在の区画割を保全し、水路と農道は区画に合わせて曲線で整備する方針に決定。その方針を受けて、吉田氏と15名の学生メンバーから成る骨寺自主ゼミが組織され、骨寺村遺跡調査のプロジェクトが本格的にスタートした。
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導入の決定要因
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骨寺村遺跡調査のプロジェクトは、GIS利用を前提として組み立てられた。当初、同教室には地図データを表示させる目的で既にGISが導入されていた。ただ、地図データ表示のみであれば既存のGISで十分だったが、このプロジェクトでは高精度の作図作成、データベース構築、地図とデータベースの連携などの機能を備えたシステムが必要だった。そのため、当時からデータ提供等で付き合いのあった測量会社、(株)八州の紹介で「空間情報システムSIS」を導入することとなった。
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運用状況
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本寺地区の景観の大きな特徴は水路であることから、プロジェクトメンバーは水田の畦畔を歩き、用水の出入箇所を記録したり、水田表土の深さを測定したり、屋敷林内部の墓石の分布を記録して屋敷地跡を推定するなどの調査を行った。調査結果から、当時の水路形状のうち9割以上がそのまま残っていることが判明した。
図化作業では、まず、明治時代に作成された本寺地区の地籍図をSISに取り込み、現況地形図と重ね合わせ、歪みを吸収しつつ作図、比較していった。地区全体を5つに分けて作業。1つあたり約2ケ月かかったため、全体の作業終了までに1年程度かかった。また、地図作成と並行して当時と現在の土地台帳の情報を入力し、データベースも構築していった。データベースとのリンクが可能なので、土地所有者、地番、面積、等級などの付属情報(属性)が地図上に表示されるうえ、属性別の主題図も簡単に作成できた。図化作業においてエリアデータを1つ1つ地番と合わせていったが、作業後のチェックにかなり時間がかかった。
(株)八州のきめ細かいサポート対応により、操作の点においても特に問題なくスムーズに作業することができた。ただ、地図を学術資料に貼り付けて使用したいような場合は、地図に属性テキストを表示させたままの状態で出力するのが難しいため、画面表示した地図をキャプチャしてJPEGなどに書き出し、Photoshopでテキスト付加するなど加工を施している。
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研究室の風景
(右下は陸奥字国骨寺村在家絵図のコピー) |
明治期と現在における
水利と地割の比較 |
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明治期の土地所有 |
現在の土地所有 |
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導入の効果
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文化的景観で世界遺産登録を目指すためには、それが本物であることを証明することが重要であり、そのためにも根拠となる材料を提示することが不可欠となる。
GISをベースとした今回のプロジェクトにより、「平安時代からの水田農村の景観が現在まで続いている」「景観形成の基礎となる灌漑システムの手法が現在まで続いている」という事実が解明され、本寺地区の景観の真正性が証明された。つまり、地元住民や自治体が景観保全の意味を理解するための材料を、データで提示することができたのである。その結果、明治のラインが生きている箇所は保全しようという方針が決定し、地元住民もそれを受け入れた。今回のプロジェクトに必要な機能を装備したSISが、ここまでの道のりをしっかりと支援してきたといっても過言ではない。
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今後の課題・展開
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今のところ明治と現在の2つの時点における地図のみのため、その2つでの比較しかできないが、「たとえば、明治を起点として10年後、20年後といったように時系列で変遷を表示し、地形や土地所有の変化が見られるようになればいいですね。2008年7月、世界遺産へ登録される可能性が高い骨寺村では、ガイダンスハウス施設の建築予定もあるので、そこに時系列に表示させた変遷地図を展示できればいいと思っています」と吉田氏は語る。
さらに、「研究は方法の開発。このプロジェクトは、景観の価値を認定するための材料作りを目的とした研究だった」という吉田氏は、今後、骨寺村プロジェクトで構築し培ってきたシステムの汎用性、精度をより一層高めていきたいとも語る。今回構築したシステムを他の遺跡調査に活かせるかどうか、四国と金沢で実験的に応用利用する構想もあるそうだ。
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