仮想空間内歩行シミュレーションの結果を数値化 
バーチャル空間構築からシミュレーション結果分析まで、NavisWorksが全面支援
和歌山大学 システム工学部 デザイン情報学科 講師 川角典弘氏
「サイン計画の検討時、事前に有効性を数値として検証できないか?」
和歌山大学の空間デザイン研究室(システム工学部デザイン情報学科)は、この課題に挑み、歩行シミュレーション実験を行った。この実験を全面的に支えたのが、3Dデザインレビューシステム「NavisWorks」(ナビスワークス)だった。
仮想空間におけるデザインシミュレーション
「歩行者にとってわかりやすいサインを整備するためには、単に多くのサインを配置すればよいのではなく、機能的かどうかを定量的に評価することが必要です。インタラクティブCGを使った仮想の3次元空間モデル上ならそれが行えるのではないかと考えました。」と和歌山大学システム工学部デザイン情報学講師・川角典弘氏は語る。
和歌山大学では、地域に開かれた大学を目指して学内のサイン改善プロジェクトに取り組み、2006年には歩行者用のサインを設置。空間デザイン研究室は、この計画の事前評価を担当した。
「現地での経路探索調査は、費用や労力がかかる上に、現状の確認でしかなく、空間の変更によってどんな行動変化をもたらすかという『デザインシミュレーション』にはなっていません。仮想空間ならサイン案を視覚的に検討でき、目的に応じて天候、時刻等の状況を変えることもできます。また、モデル内の探索行動の様子をデジタルデータとして記録できますので、サインによるナビゲーション環境を定量的に評価できます。」(川角氏)
大量のモデルデータをNavisWorksで簡単に統合
実験の第一歩は、建物をモデリングして仮想キャンパスを構築することだった。学生達が分担してSketchUp等の3次元CADでモデルを作成し、それをNavisWorksに読み込む。
「NavisWorksは多くの3次元CADデータに対応しているので、学生は自分の慣れたツールで作業できます。また、管理の面倒な大量のモデルデータも、NavisWorksならどんどん読み込んでいくだけで簡単に統合できます」(川角氏)。
最後にデジカメで撮影した建物の外観写真をマッピング。これで、一目見ただけで雰囲気が伝わってくる仮想キャンパス空間が完成した。
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完成したキャンパスCGのイメージ | |
軽快なナビゲーションで本物そっくりの歩行体験
せっかくの仮想キャンパスも、モニタで眺めるだけでは臨場感に欠ける。そこで、5、6万円程度の安価なヘッドマウントディスプレイを使って、実際に歩いているかのような環境を構築。和歌山大学を訪れたことのない被験者が、研究室内でヘッドマウントディスプレイを装着し、マウスの代わりに無線のゲームコントローラを持つ。そして、仮想のキャンパス空間を、配置されたサインを頼りに、指定された目的地まで歩行シミュレーションする。
「3次元モデルの表示に時間がかかると体験性がそがれます。その点、NavisWorksは大容量のモデルでも軽快に扱えます。」(川角氏)
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| 実験システム環境のイメージ | ハードウェア環境 |
ウォークスルーの結果を定量的に記録
実験では、@サインなし、
A通常の視覚的サインの追加、B「ITサイン」追加、の3種類の仮想空間を用意し、被験者の行動を比較した。ちなみに「ITサイン」とはQRコードを印字したサイン。歩行者が目的地の写真を携帯電話に取り込み、それを手がかりに進む。モデル上ではNavisWorksのWebリンク機能を利用して再現した。
実験結果の記録においてもNavisWorksは威力を発揮。移動状態をアニメーションとして保存し、さらに被験者の視点座標データを記録してXMLデータとして書き出す。これらのデータにより、歩行シミュレーションの結果を、定量的な数値として記録・分析することが可能になった。
たとえば、歩行経路や迷った位置などを地図上に表示したり(図A)、行動時間と距離の関係をグラフにした歩行効率の比較などが可能になった(図B)
サインやQRコードを追加することで迷わずに短時間で目的地に到着できることは、容易に推測できるが、あらためて数値データとして立証された。
| (図A)パターンごとの実験結果を地図上で比較 | |
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| 歩行経路 | 迷った位置 |
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| (図B)パターンごとの歩行効率をグラフで比較 | ||
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| 1.サインなし | 2.サイン追加 | 3.ITサイン追加 |
夜景シミュレーションにもNavisWorksを活用
「NavisWorksを使うことで、被験者が楽しみながら歩行シミュレーションすることができました。」と、川角氏はNavisWorksの機能を高く評価。その一方で課題も指摘する。
「限られた被験者でなく、インターネット上に仮想キャンパスを公開して、日本中の人達に歩いてもらいたかったのですが、残念ながらアニメーション保存や視点座標の記録はインターネット越しでは行えないので断念しました。このような操作がインターネット上で行えれば、ある場所の歩行者のためのユニバーサルデザイン環境を遠隔地から評価するといったこともできるのではないでしょうか。」
サイン設置計画は3年目を迎え、今年は災害時の避難路確保を兼ねたライトアップを実施。ここでもNavisWorksを使った夜景シミュレーションを行い、設置計画の検討やプレゼンテーションに活躍した。
(この記事は、2007年7月12日に開催された「CAD・CG実践技術フォーラム2007」における川角典弘氏の講演を元に構成したものです。)
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